体験記

クリエイト速読スクール体験記 '08

通教と通学で学んだBTRメソッド

東京大学大学院  常岡 充子

1.速読歴

 私は2008年4月下旬にユーキャンの『新・速読講座』(以下「通教」)の受講を開始した。通教の全プログラムを終えたのは2008年8月中旬だったので、通教の推奨する受講期間3カ月よりはやや長い期間取り組んだことになる。通教を終えた後、最終の課題の添削返却を待たずに8月下旬にクリエイト速読スクールに入会し、2008年10月6日の時点で10回受講した。

 BTRメソッドの存在を知ったのは2008年の春で、速読を身につける方法を探していたときだった。通教の費用と受講者数、また教室の実績などを見て、すぐに資料を請求した。通教以前に速読を学んだことはないため、これが私と速読との出会いだった。

 通学で受講10回目を終えた現在、私の速読歴は5カ月である。これが長いか短いか、またその成長率は高いか低いかはさておき、この5カ月で私が学んだこと、感じたことをこれから伝えさせていただくが、全体を通して一つ断言できることがある。それは、「速読を学んでよかった」ということだ。

2.私の読書

 子どもの頃から本が好きで、親も熱心に本を与えてくれた。映画化され一時注目を浴びた『ゲド戦記』は親の薦めで小学生の頃に出会い、まだ読めない漢字が多いにも関わらず辞書で調べながら読んでいた。大人が読んでも面白い作品だが、当時小学生の私も非常に興奮し、一気に読み進めた。「本が好きな人は読みなれているため、読むスピードも速い」と思われる方も多いだろうが、私は遅かった。特に小説は、描かれている場面を想像し、その雰囲気や登場人物の思いに「共感」しようとし、会話は実際に頭の中で「話している」ように感じるため、それこそ頭の中で「音読」していた。これまでこの読み方に不満はなく、作品を味わうには必要な時間だと思い、読書速度の遅さはまったく気にならなかった。

3.速読開始のきっかけ

 速読を身につける必要を強く感じたのは、大学卒業間際だった。大学院入試を年始に控え、読みたい本も我慢し受験勉強に励んでいたとき、卒業後就職する友人が「今しか時間がないから」と本を大量に読み漁っていたのを見て、心底うらやましかった。受験勉強の必要がないことではなく、自分の読みたい本を好きなだけ読める幸せを羨んだのだ。

 なぜ速読を身につける必要を感じたのか。それは、子どもの頃とは違い今後は読書に割ける時間が短くなること、その一方で本を読みたいという思いがまったく冷めていないことに気づいたからだ。読書のための時間を確保するには、自分の作業効率を高める必要がある。

 私は現在大学院に在学しているが、ここでの「作業」は9割以上が文献を読むことだ。日本語であれ英語であれ、論文・本・授業の資料など読むべき文献は膨大な量がある。このような環境下では、読書のための時間を確保するには、読書速度を上げる必要があるという結論に達した。

 速読の習得は、読書時間を確保すること以外にも私の望みを叶えてくれる技術だと思った。それは、「たくさん本を読みたい」という望みだ。大学院生として読むべき文献は膨大な量があるが、一個人として読みたい本もまた膨大な量があった。速読の習得はまさに一石二鳥の選択だという結論に達し、速読の勉強を始める決意をした。

4.なぜBTRメソッド?

 世の中には非常に多くの「速読術」がある。前述の通り、私はBTRメソッドしか経験していないため、他の速読術との比較を語ることはできない。しかし、多くの速読術の中から、なぜBTRメソッドを選んだのかにはお答えすることができる。

 理由は3つある。

 1つ目は、文章の理解や感動を損なわない点だ。小説を味わうために頭の中で音読していた私は、この感動を奪う速読術は望まなかった。小説とそれ以外の本とで読み方を変えればいいと思う人もいるかもしれないが、やはり「時間が限られている」という思いが強くなると、そのように器用に切り替えができる自信がなかった。また、文献を多く読んだところでまったく頭に入っていなければ時間の無駄になるので、文章の理解度を下げる速読術の習得も望まなかった。いつ、どのような本を読んでも、十分に内容を理解し、その文章の世界を楽しむことができる速読術である必要があった。

 2つ目は、3倍速を目指し、それを達成している受講生が多い点だ。「驚異的な」数値を示した広告を出すような速読術がある一方で、あえて「3倍速」を謳っているBTRメソッドは信頼できると思った。少なくとも読書速度が3倍になれば、今の3倍の本を読むことができるのだ。できるかわからない数値を目指すよりも、確実に現状よりも高い能力を得られるという信頼感が、BTRメソッドにはあった。

 3つ目は、通教の受講料だ。「ここまで語っておいて、最後はカネか」と思う方もおられるだろうが、しかしきれいごとは言っていられない。通教の値段を見て、「これで3倍以上になれるのなら安いものだ」と思った。受講料を払うのは1回だけだが、3倍速になることで得られる余剰時間は今後一生続くのだ。そう言い聞かせて申込書を投函した。

5.通教での受講

 通教と通学とでは、その内容にほとんど差がない。質は同じと言って支障ないと思う。また、「通教は飽きるのでは?」という不安を抱く人もいるだろうが、このプログラムは非常によくできているので、55回のトレーニングを通して飽きたと感じたことは一度もなかった。

 通教は先生が見ていないので集中しないと思うかもしれないが、私の場合はそのようなことはなかった。一つはやはりCDの質の高さ故だと思う。トレーニング中に流れるBGMが集中を促してくれた。このBGMは教室でも流れているので、その点でも通教は通学と同じ環境だといえるだろう。また、「通学の人に劣らない成績を出すぞ!」と思いトレーニングに取り組んだため、モチベーションは常に高かった。

6.通教のメリット

 通教のメリットは何か。それは、自分でBTRメソッドについて考えを深められる環境にある、という点だと思う。通教では郵便やメールで質問が可能だが、通学とは違いダイレクトに返事を聞けるわけではない。そのため、どのようにしたらもっと成績が伸びるのかを考える際に、そのトレーニングの目的や特徴を吟味して、自分なりに解釈をし、その結果を次回のトレーニングで実践するという、自分の中でのサイクルが作られる。それが近道かはわからないが、トレーニングへの理解が深められたのは良い経験だと思う。

 どのような技術にも共通だと思うが、その技術に関する知識が少ないと習得は困難になる。理解を深め、本質をとらえることができれば、その技術の習得や能力の向上は非常にスムーズになるだろう。

7.通学のメリット

 通学のメリットは、やはり講師が非常に「近い」ことだと思う。毎回のように講師の方がトレーニングやBTRメソッド自体についての考えやポイントをお話してくださるというのは、通教では得られないメリットだ。わからないことや悩みがあったらすぐに相談できる点も、非常に良いところだと思う。また、一緒に受講している方々の能力の高さや熱意に触れると、自分のモチベーションも否応なしに上がる。

8.通教と通学の違い

 通教と通学の違いはダイレクトな反応の有無だけだと思う。通教は対面ではないため、どうしても質問への返答には時間を必要とする。これはシステム上の問題のため、通教の方が「劣っている」ということではない。

9.通教と通学の共通点

 通教と通学の両者に言えることは、本人の主体性が非常に重要である、という点だ。高いモチベーションを維持することも、トレーニングに集中することも、結局は本人がどこまで積極的に取り組むかで決まる。通学の方がその助けは多いかもしれないが、あくまで「助け」なのだ。講師の方に甘えたり、周りの受講者の方の集中力に押されたりということでは、通学しても伸び悩んでしまうのではないだろうか。

10.通学の決意

 なぜ通教を終えてから通学し始めたのか。通教だけで修了としなかったのか。それは、自分の読字数に満足がいかなかったからだ。こう言うと「3倍までいかなかったのか」と思われるかもしれないが、読字数は通教終了時には受講前の約4倍に伸びた。粗筋も問題なく書ける速さで。「3倍まで伸びれば満足ではなかったのか」と思われるかもしれないが、そこで満足させてくれないのがBTRメソッドなのだ。

 BTRメソッドの「認知視野の拡大」や「読書内容への集中」のトレーニングは、通教55回を通して非常に成績が伸びた。それに伴い読書訓練でも日常の読書でも、非常に広い範囲の文字を見ることができるようになった。しかし、「見えているのに読めない」というジレンマも感じるようになったのだ。「見えているのだから読んでいるのではないか」と思う方もおられるだろうが、私の感覚は違うのだ。「文字が見えてはいる。だが、理解した箇所はもっと手前まで」なのだ。これは、非常にもどかしい感覚だった。

 これを解消するには更にトレーニングを続ける必要があると、通教の40回目くらいで感じていた。はじめはクリエイト速読スクール公式ブログを閲覧したり、通教のメール質問のシステムを利用して自分なりに工夫を続ければ、いつかはこのもどかしさを解消できると思っていた。しかし、通教が終わる頃に「一生懸命トレーニングに取り組んだが、このもどかしさは解消されなかった。このまま自力で続けて本当に解消されるだろうか」と思い始めた。

11.通学での受講

 10回通学した今、自分の選択は正しかったと思っている。受講するごとに講師の方が訓練結果にコメントをしてくださり、自分の良い点や今後もっと伸ばすべき点をすぐに知ることができるのは、次の回の目標が明確になり、励みにもなる。通教時に自分なりにトレーニングについて考えていたため、講師の方に相談するときも「自分でできる限り考えた」という自信からか悩みを正確に伝えることができ、助言も全て「自分が思い至らなかった点だ」と思えるためか吸収が速いように感じる。

 今は通教時にはあまり読まなかった小説に取り組み、少しずつだが成長しているように感じる。日常で読む本も、十分理解できる速さで読んでも以前よりずっと速くなっている。

12.速読との今後の「つきあい」

 そして、あのもどかしさもわかりかけてきている。つまり、序盤の「視野」と中盤の「理解」が、終盤の読書速度に本来的な意味で連携できていないのではないかということだ。これまでの通学での10回は、まだ通教の延長線上にあったのかもしれない。これからは、1回ごとの倍速読書により強い負荷をかけて臨んでみたい。

 文章を読むことから決して離れることのない環境に身を置いている以上、速読という技術は今後非常に強力な武器となるだろう。同時に、読書を通して日々の生活をより楽しむための味方にもなると思っている。自分のための技術なのだから、今後も主体性を持ってトレーニングに取り組みたいと思う。

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自分の限界を試してみたい

2007年一級建築士試験合格  小山 奈々

1.窮屈な読書

 速読に関しては、いつからか思い出せないぐらい前から、ずっと気になっていた。

 しかし、実際に行動に移すことは少なく、速読に関する本を読んでみたり、人に速読・速聴の講座の話を聞いてみたりしていた。でも、あまりピンと来ることがなく、読みたい本が本棚にたまっていくのを見ては、焦ってばかりいた。

 小学生のときから読書が好きだったので、読書自体に拒否反応はなかったが、なかなか思うようには速く読めなかった。今、考えると、本は最初から最後まで一字一句読まなくてはいけない、と自分で強く思い込んでいたために、窮屈な読書になってしまっていたのが原因だと思う。

 その後、偶然、クリエイトの体験レッスンを受講する機会があり、ぐっと速読の魅力に引き込まれた。入会するまでそこから更に1年を経過したが、自分の限界を試してみたい、という思いが強くなり、フルタイム50回コースを申し込んだ。

2.入会の動機

 入会を決めたきっかけは、2006年に一級建築士の受験を考えていたことと、大学の通信教育部(哲学専攻)に籍を置いていたため、そのリポートと卒業論文を作らなければならなかったこと、また仕事で英語を使う機会が増えつつあり、英語の勉強をしなければならなかったことなどが重なり、とにかく時間がたりないと考えたことである。

 スクールを始めたときの目標は、大学のリポートと卒論の作成のために、たくさんの本、それも専門書を読まなければならなかったので、そのスピードアップと効率化を考えて決めた。

 そのときは、クリエイトの体験記で資格試験に有効と書かれていたが、正直あまり期待してなかった。一級建築士の試験を控えてはいたが、そちらにはあまり期待せずに、読書のスピードが速くなれば絶対に損にはならないし、少しやってみるか、という軽い気持ちではじめた。

3.建築士と哲学と英語を同時進行

 2006年の4月からスクールに通い始め、その年の7月の試験ではまだまだ発揮できず、結果も不合格だったが、その年の後半までに40回まで通い、基礎を作り上げた。この期間では、読書に対する基本的な考え方を改めたことと、ゲーム感覚で集中力を高めることができたことが収穫だった。

 また、公文のSRS(Speed Reading System)も同時に受講をはじめ、日本語と英語の速読を半年間夢中で習得していた。公文のSRSは、同じ2006年の4月から受講をはじめ、最後のコースまで終了したのは、2007年の3月だった。

 建築士と哲学と英語を同時進行するのは、無茶かな、と考えたが、やってみるとすべて脳内で使う場所が違うと感じたので、それぞれをバランスよく取り込むことによって、格段に作業スピードが上がり、クリエイトでの経験もプラスされ、あらゆる場面で相乗効果を発揮した。

4.クリエイトの各訓練

 全体を通していえるのは、とりあえず信用して、素直に前向きに取り組むことだと思う。また、どれもすぐに効果が現れるので、勉強よりも楽しく簡単だった。以下、クリエイトの訓練について特に効果を感じたものを挙げておく。

A.カウント呼吸法

 講義の最初で行うこの訓練は、いつでもどこでも集中できる自分をつくることができる。

 たとえば、日常の中で、駅のホームや満員電車の中、社内、どんな人ごみの中であっても、時間、場所、その日の体調、状況など周囲の環境に左右されることなく、集中力をつけることができるようになった。常に高い位置で安定した自分でいられることは、とても大きな強みになった。

B.パターンシート訓練

 様々なシートを使って自分の視野を広げる訓練をするが、大事なことは、多少、乱暴でも良いから、前へ前へという気持ちを持つことだと思う。常に、過去の自分の数字を上回ることを心がけた。あるシートを使っての訓練では、好調なときは本からはみ出てその周囲のものが目に入るくらい視野が広がったことがある。

C.イメージ読み訓練

 様々な訓練を繰り返したが、特に私は、ストーリーを書く作業が一番好きだった。元々文章を書くことが好きなので、抜けてしまったところは勝手に作って、一人で楽しんでいた。

D.倍速読書訓練

 最初は、思い切り良く読むことに不安を感じるし、今でも著者に申し訳ないと感じることもあるが、とりあえずやってみてほしい。一度体験すれば、それがどんなに効果的か理解できる。時々、メトロノームを使って、ありえない速さで読んだことがあったが、理解できなくても、何か、単語一語でも読もうという気持ちが出て来て、効果的だったし楽しかった。また、本当におもしろい本に出会うと、講師の声も聞こえないくらい集中して読んでしまうこともあったが、そういう集中力もあっていいと思う。いろいろな読み方があっても良いと実感することが、必ずその後の読書に良い影響を与えると思う。

5.2回目の受験で無事合格

 私にとって2回目の2007年の試験を控えて、その年の前半は、7月の学科試験に向けて本当に無我夢中の毎日を過ごしていた。建築士の試験は、とにかく覚えることが多い上に、実際の自分の仕事と関係が薄い分野も当然あるので、とても苦労した。私はクリエイト速読スクールから目と鼻の先の学校に通っていたが、毎回、前を通るたびに、スクールで体感したこと、身につけた集中力を頭の中でイメージしながら、建築士の学校に通い、帰りには、クリエイトの前を通るたびに、きちんと生かせることができたかどうか、反省しながら歩いていた。

 あきらめることなく勉強を続け、2回目の受験で無事合格。その後の10月の実技試験に進むことができ、最終的に12月に合格した。

 また、2007年の後半には、大学の卒業論文という難題も待っており、10月に建築士の実技試験が終了してからは、論文に頭を切り替え、哲学の専門書を20冊ほど読み漁り、夢中で論文を作成した。このときは、もちろん集中力も異様に高かったのだが、専門書を自分でもあきれるくらいのスピードで読み、自分が必要としている内容をすぐに見つけ出し、短期間で論文を書き上げることができた。大学も無事に修了し、2008年3月に卒業した。

6.これからのこと

 50回のコースを申し込み、集中して約半年で終了させようと考えていたが、受講しているうちに、スクールで学んだことをもう一度、実生活に落とし込んでみて、もう一度復習の意味も含めて、通い直したらどうなるだろう? と考えた。結局、まずは40回受講して、その後は、スクールから離れて、資格試験の勉強と、速読の感覚を実際の読書を通じて実感する、ということを自分に課して、実行した。現在、残りの10回を受講しているところだが、受講期間に、故意に1年を空けたことによって、改めて自分に刺激を与えることができていると思う。

 今では常に本を1冊持ち歩き、内容によっては、往復の通勤時間(約1時間)で1冊をらくに読み上げるほどになった。そのほか、新聞、雑誌、メールを読むスピードも格段に上がり、仕事の上でも効果が出ている。ずっとためてしまっていた本棚の本がどんどん減っていくのを見ているのは、とても気持ちがいい。今年中には、そこもなくなる予定なので、次は、近所の図書館に足を伸ばして、興味を持った本を片っ端から読もうと思っている。また、長期目標として、英語をはじめとした語学修得、不動産鑑定士取得を考えているので、そちらも今後、頑張っていきたい。