出版物紹介

『速読らくらくエクササイズ』
第1章 BTRメソッドとは何か

1 頭の「体力不足」をどう克服するか

(1)頭のアスレチック・ジム=BTRメソッド
頭にも必要な基礎体力

 あなたが、サッカー選手だったとします。ただし、控え選手です。ボールの扱いには自信があるのですが、練習試合に出ると、前半終了間際に、よくスタミナ切れを起こします。そのせいか、いまひとつ監督の信頼を得られていないようです。

 そんなとき、サッカー選手のあなたなら、どうしますか。手短な方法は、アスレチック・ジムで、基礎体力・持久力を鍛えることではないでしょうか。最近は、一般のアスレチック・ジムでも、運動工学やスポーツ科学の研究成果を取り入れた、相当に本格的なトレーニングマシンが導入されています。専門のインストラクターが、個人別にトレーニングメニューを組んでくれるのが当たり前になっています。ここで、地道に心肺機能を高めるトレーニングに励んでスタミナ不足の弱点を克服すれば、レギュラーを勝ち取ることも遠い夢ではないはずです。

 次に、あなたが、仕事の効率化に悩むビジネスマンだったとします。限られた時間で、大量の資料、取引先からのメールを読まなければなりません。新しい知識を吸収するため、できるだけ読書もしたいところです。また、将来、独立を目指して、資格を取りたいとも考えています。ところが、なかなか勉強時間が確保できない状況です。もっと有効に時間を活用できたらと、自分自身に対して歯がゆい思いをしています。

 そんなとき、ビジネスマンのあなたなら、どうしますか。この答えを見つけようと成功者が書いたビジネス書などを読むと、「コマ切れの時間を使え」というアドバイスが、よくあります。通勤・移動時間や人との待ち合わせ時間など、数分単位のコマ切れ時間を、勉強や読書にあてろというわけです。なるほど、これを実践できれば、相当な効果が期待できそうです。

 しかしながら、一度でも実行した方なら分かると思いますが、なかなか思い通りに行かないのが現実です。5分ほど読書しても5ページからせいぜい10ページくらいしか進まず、本の概略はなかなか頭に入ってきません。また、せっかく勉強した内容も、次々抜けてしまいます。つい携帯電話や中吊り広告が気になったり、雑念が入ることも頻繁かもしれません。

 これは、サッカーでいうところの「基礎体力・持久力」が不足しているからです。たとえ数分でも人間が知的作業をする際には、一定以上の情報処理能力が要求されます。この前提能力が不十分な状態で、読書や勉強に取りかかっても効果は上がりません。それどころか、ますます読書や勉強がおっくうになってしまいます。このような場合は、ひとまず、頭の「基礎体力・持久力」に相当する情報処理能力を向上させる必要があるはずです。そこで、本書を通じて、あなたにご紹介したいトレーニングプログラムがBTRメソッドです。

BTRメソッドとは

 BTRメソッドの基本的な骨格は、1986年に、日本語の速読技術を習得するための実践的なトレーニングプログラムとしてクリエイト速読スクールによって考案されました。この名称は、Basic Training for Readers methodの略で、読書する人のための基礎的トレーニング法という意味をもっています。読書の基本的な能力を鍛えようという趣旨からの命名です。

 BTRメソッドは「読む」という行為にさまざまな角度からアプローチし、より深い集中・理解・記憶を可能にすることをねらいとしています。頭の「基礎体力・持久力」を鍛えるための、アスレチック・ジムといってもよいかもしれません。

「速読」に対する誤解

 「速読」に対しては、いまだに過剰な期待、あるいは疑問を抱く方が多いのが現状です。

 「1分間に本を何十ページも読んで、人をあっと言わせたい」、「速読をマスターして、資格試験にらくらく合格できるようになりたい」、「本を読むのが苦手なので、自分には、無理に決まっている」、「できるようになる人もいるかもしれないが、できない人の方が多いのでは」など、実にさまざまです。

 「速読」という言葉から、本を速く読むという意味自体は伝わっているようですが、残念ながら、「速読」の具体的な中身については、いまだに誤解されている場合が少なくないようです。

 そこで、これからしばらく、「速読」に関する一般論と、BTRメソッドの基本的な考え方をお話したいと思います。

これまでの「速読」の問題点

 「速読」という言葉が日本で広く知られるようになったのは、1980年代半ば、韓国のキム・ヨンジン氏が考案したといわれる「キム式速読法」が、マスコミによって紹介されてからです。

 その後、厳しい競争社会の影響からか、速読に対する社会的関心が一時期、高まりました。右脳、左脳、言語中枢、α波、β波、シナプスなどの科学用語を散りばめた速読本が数多く出版されました。テレビなどで、1分間に10万字も読む超速読者が紹介されたのも、この時期です。1分間に10万字の読書というのは、300ページの文庫本を2分弱、あるいは「天声人語」などの新聞朝刊一面下コラム(約550~750字)を約0.5秒かからずに理解できるスピードです。

 このような、特殊な能力をもつ超速読者が存在する可能性は、否定しません。芸術やスポーツと同様、この分野でも、人並み外れた才能を持つ人間がいても全く不思議ではないからです。しかしながら、常識的に考えて、1分間に10万字という読字数は、普通の人が地道な努力を経てたどり着ける現実的な数字ではありません。もちろん、同じ本を読み返すなら可能でしょうが、それは、本来の速読ではないはずです。

 これまでの速読本は、「右脳開発」や「脳波」などの、一見もっともらしい用語を使ってはいるものの、それが、「読む」作業の効率化にどのように結びつくかという点で、明らかに説明不足でした。

 また、これまでの速読の練習では、眼球運動訓練や記号訓練の練習に大半の時間が費やされていました。読書には、集中力やイメージ力、および記憶力という要素が不可欠であるにもかかわらず、それらを向上させるトレーニングの開発は、大きく立ち遅れていたのです。つまり、受けてみないと本当に速く読めるようになるかどうかがわからないという「賭け」のような危うさがつきまとっていました。

 さらに、速度だけが強調された結果、具体的に読書習慣がどのように改善されたか、あるいは、どのような試験で効果を発揮したのか、という最も重要な点での評価が置き去りにされています。

(2)BTRメソッドが目指す「速読」

 速読は、特殊な能力をもつ一部の人間だけのものではありません。

 活字を読むことが苦痛な方は、まずは活字への抵抗感を緩和して、むりなく読書習慣を身につけることが大切です。読書は好きだが自分の情報処理能力に限界を感じるという方は、個別的なトレーニングメニューによって、これを着実に向上させなければなりません。

 速読は、このような地道な積み重ねで得ることができる、読書の基本的技術です。

 BTRメソッドが目指す「速読」とは、ごく普通の人が、通常の読書能力を向上させていく結果として、必ず習得できる技術を意味しています。

BTRメソッドのシステム

(3)BTRメソッドの特長
特長1.実現可能な読書速度を着実に達成していく

 「速読」というからには、もちろん、いま現在よりも速く読めるようになることが必要です。しかし、そもそも速読をマスターしたいと思っている方は、単に読字数だけを伸ばすことを目的にしているのではないはずです。

 限られた時間を活用してたくさんの小説を読みたい、書類を読むスピードを上げてより大きな仕事を成し遂げたい、早く資格試験に合格して社会で専門知識を生かしたい、など動機はさまざまですが、速読を、自己実現の一手段として位置づけられている方がほとんどです。

 そうであれば、同じ本を何回も読んだりしての50倍、100倍のごまかしのスピードなど達成できなくても、初見・未読の本の3倍、5倍の速読力がつくことは十分魅力的なはずです。BTRメソッドでは日常生活で実現可能な読書速度のアップを目指していきます。

特長2.「認知科学に基づいた実践的プログラム」

 BTRメソッドのトレーニングプログラムは、「認知科学」の研究成果を基礎として、構築されています。

 「認知科学」とは、「文字や文章を読んだときに、人間はなぜ意味を理解できるのか」というような人間の情報処理の働きを、脳神経科学、脳生理学、心理学、言語学、論理学、人工知能科学の見地から、横断的に解き明かそうとする学問です。

 たとえば、「犬」という文字は、それだけでは、紙上に書かれた線と点の集まりです。にもかかわらず、日本語を知っている人であれば、これを見た瞬間に、動物のイヌを具体的にイメージして、意味を理解することができます。これは、私たちの大脳には、経験から得られた動物のイヌのイメージと、「犬」がそのイメージを意味するという学習成果がインプットされており、感覚器を通じて得られた「犬」という文字情報と結びつくからです。

 速読は、感覚器を通じて得られる文字情報を増加させ、なおかつ、その文字情報と、記録されている各種のイメージとを結びつける脳の情報処理の効率化を図ることによって、理論上は、可能になると考えられます。

 BTRメソッドでは、この「認知科学」の考え方を応用して、認知視野を拡大し、短時間で識別できる文字情報を増加させることを可能とする、各種シートトレーニングを開発しました。また、個人に能力差があることを前提に、感覚器を通じて得た文字情報を瞬時にイメージに結びつけることができるよう、さまざまなイメージ力・集中力の向上を図るための独自のトレーニングを考案し、実践しています。

特長3.飽きずに続けられるトレーニングシステム

 これまでの速読法では、眼球運動や記号訓練の習得に大半の時間が割かれていました。そして、これについて一定の成果がなければ、その先の読書トレーニングに進めない、というようなものもあります。

 しかしながら、読書習慣は、眼球運動や記号訓練だけで簡単に変えられるものではありません。また、能力の個人差を軽視した単調な訓練が繰り返され、結果として、多くの挫折者を生み、速読に対する誤解を助長していた面がありました。

 この点、BTRメソッドでは、目の運動・視野拡大に偏らず、人間の情報処理能力に個人差があることを前提に、受講生各自が少しずつ上の目標を設定することで、「小さな達成感」を味わうことができるようなプログラムが設定されています。

特長4.読書速度向上によって得られる具体的な成果

 BTRメソッド・トレーニングの修了者から寄せられる声は、単に読むスピードが速くなったという喜びにとどまりません。

  • 本にすぐ集中でき、楽に読めるし、よく分かる。
  • 小説を読むと、物語が映画のように心に浮かんで、とても楽しい。
  • 法律書などの難しい本でも、目だけ字面を追っているということがなくなり、集中して読めるようになった。
  • 勉強や仕事の能率が上がり、やりがいが出てきた。
  • 大量の文章の中から重要ポイントを的確につかめるようになって、試験勉強でも大いに役立った。

 また、クリエイト速読スクールの受講生からは、1993年以降毎年、司法試験の最終合格者が出ています(2006年現在で、計27名)。その他にも、公認会計士、税理士、弁理士、司法書士、中小企業診断士試験など、数々の難関資格の合格者を多数輩出しています。

 このような試験を突破するには、大量の参考書を読破する速読力と記憶力、難しい問題を解くための集中力と理解力が必要です。これらの「頭の基礎体力」が、BTRメソッドのトレーニングによって鍛えられた証しといえるでしょう。BTRメソッドの成果は、「速く読むこと」によって受講生が獲得した具体的事実によって裏づけられています。

2 BTRメソッドにおける速読のメカニズム

(1)現在の読書習慣を改善することが基本

 本を速く読めない人の事情を探っていくと、さまざまな読書習慣上の要因が複合的に影響していることが分かります。たとえば、どのような文章に関しても、一言一句文頭から読むことにとらわれるあまり、文章全体、段落全体、あるいは、章や本全体に注意が向いていないことがあります。

 また、読んでいる際中に他のことが思い浮かんだり、字面だけを追っていたりと、読書内容に集中しきれていない傾向が見られます。そして、今読んでいる箇所に至るまでの大きな流れがイメージできないため、「理解が追いつかない」という不安感から、以後のページをスムーズに読み進めることに、一層ちゅうちょしてしまう場合があるようです。

 仕事に勉強にそして遊びにと、いつも追い立てられる結果、読書を楽しむだけの時間的・精神的余裕が現代人全般に不足してしまっている時代背景も影響しているのかもしれません。

 これらの諸事情は、遅読の原因になるだけではなく、読書そのものを苦痛な行為にしてしまう場合があります。そうなるとますます読書から遠ざかり、活字媒体から得られる情報に対する興味・関心すら失われることになりかねません。

 そして最後には、読むことがさらに苦痛になり、情報処理能力が低下して遅読が加速する状態を引き起こしてしまいます。こうなると、もはや読書習慣の諸要因が重なって、「遅読の悪循環」となってしまいます。

 このように説明してくると、速読にいたる積み重ねが、非常に迂遠で、ひどく面倒くさいと思われるかもしれません。しかし、これをサッカーに例えるなら、まず基礎体力をつけて、なおかつ、ドリブルやシュートなどの基本技術を習得できてはじめて、計90分のゲームを楽しむことができるのと同じことなのです。

 読書の基礎体力や持久力に相当する、認知視野の拡大と読書内容への集中を着実に向上させた上で、読書トレーニングを正しく実践していけば、あまり時間をおかずに本を読むのが苦痛でなくなり、楽しい行為・作業になってきます。

 以降では、実際の読書習慣をどのように改善していけば速読が可能になるのかという見地から、BTRメソッドのメカニズムを説明します。

(2)文字情報の特性を生かす ―認知視野拡大の必要性―
黙読しない読書

 速読に対する根本的な疑問として、「黙読しないで、文の意味が分かるのか」というものがあります。確かに、ふだん読書をしているときのことを考えてみると、黙読とはいっても頭の中で音声となって聞こえているのがふつうです。音声化しないと、意味が理解できないのではないか、と思う人もいるでしょう。

 しかし、これには、長年音読や黙読が習慣となってきたことによる誤解があると思います。

音声情報による文章理解

 ためしに、次の文章を見てください。

 太郎は、夏休みに家族と、海に行った。

 まず、これを音声情報として理解する場合を考えてみます。

 この文章を音読すると、「たろうは、なつやすみに、かぞくと、うみに、いった」となり、聞いている人は、最後まで聞いてはじめて、「あ、太郎という人が、家族といっしょに夏休みに海に行ったんだな」ということが分かります。音声情報は、一音ずつ順に耳に入り、消えていきます。この方法では、同時に処理できる情報量には限界があるので、理解するスピードは遅くならざるをえません。このように、情報が1つずつ順に取り入れられて処理する方法を、直列的処理と呼びます。

文字情報による文章理解

 それでは、同じ文を文字情報として理解する場合はどうでしょうか。

 これを文頭から一語一句音読したとしても、実際には、文章を見た瞬間に5つの文節を目に入れることができます。そして、文末までたどり着く前に文章の意味を理解することができます。

 文字情報は、音声情報とちがって紙上に残存しているため、人間は、複数の情報を同時に認識することが可能です。このように、複数の情報を取り入れて、同時に処理する方法を並列的処理と呼びます。この方法によれば、多くの情報をすばやく処理することができます。

 私たちは、このような並列的処理が可能という書き言葉の性質を、無意識に利用して本を読んでいます。

 たとえば、本の中に、「ライトな気分」、「ライト前ヒット」、「ライトがまぶしい」という表現があったとします。「ライト」は日本語の表記としては同音ですが、この語に出会うたびに、立ち止まって意味を考えることはあまりありません。その文脈に合わせて、自然とその文にふさわしい意味を思い浮かべて読み進めることができます。

 これは、無意識に、「ライト」に続く「~な気分」、「~前ヒット」、「~がまぶしい」という部分を同時並列的に読みとって、文章の前後関係から「ライト」の理解を助けているのです。

文字の並列的処理に必要な「認知視野を拡大するトレーニング」

 このような能力は、特殊なものではありません。日本語を書き言葉として使っていれば、自然と身につく能力です。ただ、黙読という長年の習慣の結果、十分生かされていないのです。

 誰もが持っている、この基礎的な能力を、トレーニングによって少しずつ向上させることができれば、読書作業の効率化が可能になるはずです。つまり、文字情報を同時並列的に処理する基礎的能力を最大限に生かし、音声化にともなう遅読の原因を解消していくことが、BTRメソッドの大きな柱になっているといえます。この部分が、「認知視野の拡大」というトレーニングに結びついているのです。

(3)言葉から得られるイメージに注意を向ける ―読書内容への集中力の育成―
言葉を音声化して理解する習慣

 小学校に入学して、私たちがはじめて国語を習うとき、まず五十音と教科書の音読から入ります。そして、言葉を覚えるにしたがって黙読ができるようになります。声に出すか否かの違いはありますが、音読や黙読は、紙面に書かれた文章を、一度音声化してから理解する点で共通します。

 このような読み方は、幅ひろい語彙の習得や文章の読解力を育成するに際し、効果を発揮します。発音による言葉の意味の違い、文学鑑賞における文章の音韻やリズムは、音声化を習慣づけることによって身につくものといえるでしょう。その意味で、音読および黙読の習得は、国語教育においては不可欠だと思います。

 ただ、文章を一度音声に戻してから理解する読み方に慣れすぎると、国語力の前提となる、基本的な文章の情報処理能力の発達が不十分になってしまう可能性があります。

 たとえば、仕事や勉強の必要上、内容を頭に叩き込まなければならない本があったとします。多くの人は、読み落としがあっては大変ですから熟読します。ところが、一言一句読み込んだはずなのに、結局、その本全体の内容が十分理解できない、ということがよくあります。これは、言葉の音声化にとらわれるあまり、言葉や文章から得られるイメージを十分生かしきれていないからです。また、最初の一行から最後の一行まで、丁寧に黙読して初めて本の内容を理解できるという先入観が、障害になっているのかもしれません。

音声化しなければ理解できないか

 実際、本を理解することは、文頭から一言一句黙読しながら読み込んでいくことを意味すると、一般的に考えられています。

 しかし、必ずしも、そうとは言えないのではないでしょうか。

 たとえば、「コーヒー」と「こおひい」という言葉が書かれていたとします。両方とも音としては、ほぼ同じです。ところが、前者であれば、音声化を伴わなくても見た瞬間に、香りたつカップをイメージすることができるのに、後者では、そうはいきません。これは、「コーヒー」という字面そのものに、イメージを湧き起こす力があるせいだと考えられます。

 先ほどの「太郎は、夏休みに家族と、海に行った。」という例文を思い出してください。音声化すると、文字通りの意味でしかないのですが、よく考えてみると、そこには、言葉で表記されていないイメージが伴っているはずです。

 詳しくは書かれていませんが、「夏休み」があるということは、おそらく太郎は学校に通っているのでしょう。また、「家族」という言葉からは、お父さんお母さんに連れていってもらったことが想像できます。すると、太郎は、まだ幼い年齢であるように思えます。そして、夏休みに「海に行った」というからには、おそらく、海水浴に行ったんだろうとイメージできます。人によっては、海釣りに行ったシーンを思い出すかもしれませんが、その辺は自由にイメージしてもかまわないところです。

 このように考えると、言葉や文章の理解は、活字を音声化して得られる情報を認識することだけで行われているわけではないことが分かります。むしろ、文字情報から導き出されるイメージをいかに豊かなものにして、他の文字情報のイメージと結びつけていくかが、文章理解の鍵になっているといってよいでしょう。

論理的な文章を読む場合でもイメージは必要

 このことは、小説やエッセイに限った話ではありません。論理的なテーマを扱った新書や専門書、あるいは勉強や仕事の資料を読む際にも同じことが言えます。

 確かに、このような本を読む際には、小説やエッセイを読むときのように、映像化された物語を思い浮かべるわけにはいかない場合があります。

 しかしながら、これらの本を読んで、「理解できた」と感じたときのことを思い返してみてください。それは、本全体を通じた著者の主張や論理の筋道、あるいはキーワードとキーワードとの結びつきなど、文字情報としては必ずしも明示されていない内容を、自分なりに読み取れたときではないでしょうか。

 論理的な本を理解する場合も、字面の文字情報自体ではなく、本全体に秘められた核心部分を、自分なりに解釈することに意識を向ける必要があります。そして、この読み取った核心部分が、論理的な本におけるイメージに相当するのです。

集中力・イメージ力がつく「読書内容へ集中する」トレーニング

 本を読んだときに得る文字情報から具体的にイメージを呼び起こす力は、多かれ少なかれ、誰もがふつうにもっています。この力は、小説やエッセイのみならず、理論的な本の場合でも発揮されます。

 文字情報を音声化する習慣を改善して、この基礎的な能力を徐々に向上させることができれば、読書作業の効率化が可能になるはずです。この文字情報からイメージを呼び起こす力は、文字情報から自分が何を感じて、他の情報とどのように結びつけるかという点に意識を集中してこそ、効果を発揮することができます。

 このように考えると、文字情報から豊かなイメージを呼び起こす力と、これを可能にさせる集中力を最大限に生かし、音声化にともなう遅読の原因を解消していくことが、「認知視野の拡大」とならぶ、速読技術習得の大きなテーマになることが分かります。

 BTRメソッドは、この点を踏まえて、「読書内容への集中」というトレーニングを設けています。ここでのトレーニングは、受講生が楽しみながらイメージ力や集中力を鍛えることができるように工夫されています。

(4)実際の読書で情報処理能力を最大限に生かす ―読書トレーニングの積み重ね―
「速読」と「拾い読み」との違い」

 速読は、「拾い読みと同じことではないのか」と、よく誤解されることがあります。 一般的に、「拾い読み」というのは、1ページのところどころだけを読んでページをめくっていく方法です。拾った箇所以外については、活字として目に入っていないか、あるいは内容を読み取ろうという意識がほとんど働いていない状態です。

 これに対して、「速読」は、一文章または一段落単位の活字のかたまりを広い視野に入れ、集中力・イメージ力をフルに生かして瞬間的に読み取ることで、本の概略をつかもうとする技術です。単位時間内で視野に入れる活字の分量と、その本全体を通じて到達しようとする理解度において、「拾い読み」と「速読」は、大きく異なります。

「拾い読み」と「速読」の使い分け

 読書の目的に応じた読書方法という点でも、両者を比較してみましょう。まず、「拾い読み」は、調べものや、すでに本の中身が分かっている場合に効果的な読書方法です。他方、「速読」は、限られた時間内で小説を味わったり、処理しなければならない大量の文書があって、効率よくこれらの概略を理解したい場合に、効果を発揮する読書方法といえます。ところが、普通の人が、単に速く読もうとすると、つい「拾い読み」になりがちです。

 これは、潜在的な情報処理能力をうまく引き出すことができないために、ページをめくる速度に理解が追いつかず、結果的に「速読」と「拾い読み」を使い分けることができない状態にあるのです。

 そうすると、実際に本を読んでいく過程で、「拾い読み」との違いを意識しながら、文字の認識能力やイメージ力・集中力を、最大限に引き出すことを可能にする実践的トレーニングが必要であることが分かります。

高速度を保ちながら本の内容を理解する

 では、文字の認識能力やイメージ力・集中力をどのように活用すれば、高速度での本の内容理解が可能になるのでしょうか。

 ここで、一般的な本の読解過程を分析してみましょう。

 小説、新書、専門書を問わず、一冊の本は、小さな意味のかたまりが、大きなまとまりを形成し、それがいくつも積み重なることで成り立っています。

 一文単位での意味のまとまりは、主語・述語といった要素が組み合わさることで成立します。一段落という意味のまとまりは、たくさんの一文が組み合わさることで成立します。同じように、1つの章や節は、たくさんの段落が組み合わさることで、一冊の本は、たくさんの章や節が組み合わさることで成立するのです。

 一冊の本の読解は、このような小さな意味のかたまりを認識しつつ、同時並行的に、より大きな上位のかたまりを読み取っていくプロセスの繰り返しを意味しています。最もスタンダードな読書は、構成要素の小さなかたまり(一文)を全部読んでから、上位のかたまり(一段落)を理解する方法をとることです。

 (樹系図)

 しかし、この読書方法だけしか使えないと、どうしても読む作業が非効率的になってしまいます。小さなレベルに注意力が割かれる結果、かえって概略を掴みづらくなるというデメリットも生じます。

 速く読むためのポイントは、小さなレベルの認識に終始せずに、上位の大きなかたまりを、いかに速く読み取っていくかにかかっているといえます。すなわち、広い範囲に注意を向け、段落や章などの上位のかたまりを読み取ることに意識を集中させるのです。

 このような読書方法を習得すれば、すばやく上位レベルのかたまりを把握していく読み方と、下位レベルの一言一句にこだわる読み方を、本の内容に応じて使い分けることができ、読む作業にメリハリをつけて効率化が図れるようになります。このような意識の修正が、単なる「拾い読み」と「速読」との区別を可能にするのです。

実践で総合的な情報処理能力を引き出す「読書トレーニング」

 BTRメソッドでは、「認知視野の拡大」および「読書内容への集中」を図るトレーニングの後に、「読書トレーニング」を設定しています。これは、1分あるいは2分といった単位時間あたりの目標ページと理解度を決め、積極的に高速度での読書を実施していくトレーニングです。

 たとえば、1分間で、これまでの倍のページをめくりつつ、なおかつ概略を理解するよう負荷をかけるとします。すると、最初は苦しくても、その負荷に少しずつ情報処理能力が対応できるようになり、一言一句の言葉の理解から、より上位レベルのかたまりの把握に慣れていきます。

 なお、ここでは、小説、ノンフィクション、実用書、新書といった、初見の一般書籍を用います。普段の読書と同じ本で倍速読書のトレーニングを行ってこそ、情報処理能力に対する適正な負荷となるからです。

 BTRメソッドは、「認知視野の拡大」および「読書内容への集中」を図るトレーニングにより個人の諸能力を十分引き出した後で、この「読書トレーニング」を実施することにより、できるだけ無理がない形で、速読の技術を習得できることをねらいとしています。

(5)BTRメソッドの3つの大きな柱

 このように、BTRメソッドでは、読書習慣を分析した結果、トレーニングを大きく3つに分け、読書力の総合的な向上を目指しています。3つのトレーニングを、ここで改めて説明します。

1.認知視野の拡大

 速読を行うには、本の1ページ全体を広く見て、瞬時に多くの文字情報を識別できる能力が必要です。認知視野の拡大では、速読を行う上で基本となるこの能力を高めていきます。

 各シートトレーニングで数値を伸ばそうとすると、自然に通常の読書で必要とされる視野より広い領域を見るようになり、眼球運動機能や文字識別能力を向上させることができます。毎回のレッスンで前回より少し高めの目標を設定して、多少(80%~90%)見え方がラフになっても、その数値にたどりつくようにすることが効果を上げる近道になります。

2.読書内容への集中

 認知視野が拡大されても、文字を目で速く追うだけでは、読書とはいえません。文字情報を瞬時にイメージに変換し、あるいは効率よく整理・理解し、かつ概略をインプットできる能力があってはじめて速読となります。

 読書内容への集中の各種のトレーニングは、楽しみながら進めているうちに、脳の情報処理能力に適度な負荷がかかり、読書内容へ集中していくための基礎体力が、無理なく向上するように考案されたものです。これが、BTRメソッドで核となる部分です。

3.読書トレーニング

 文字の認知能力や読書内容へ集中していく力を、実際の読書で実践していく段階が読書トレーニングです。

 倍速読書をおこなう際には、1ページ全体を広く見て、目標ページまで必ず目を通すようにします。同時に、イメージ力をフル活用して、内容を1つでも「理解しよう」とします。

 この2点を押さえていただければ、認知視野の拡大や読書内容への集中のプロセスで引き出された能力は、最大限に発揮されます。その結果、本当の「速読力」を身につけられるのです。

3 BTRメソッドによる具体的な効果

(1)トレーニングで生じる変化
読書速度の変化

 BTRメソッドによるトレーニングを根気よく続けると、どれくらい、読む速度を上げることができるでしょうか。

 最も標準的な、90分×50回コースを受講することを前提に、クリエイト速読スクールでの成果を説明します。

 受講生には、下は小学校中学年から上は50代、60代の実年の方まで、幅広い年齢層の方がいます。最も多いのは、10代、20代、30代です。男女比は、ほぼ半々です。

 受講第1回目には、読みやすい小説を読んで読書速度を計ります。このときの平均的な読書速度は、1分間に500字から1,000字ぐらいです。一般的な書籍の1ページあたりの字数は、600字前後ですから、1分間に1ページから2ページ読むのが、速読トレーニングを受ける前の、日本人の平均的な読書速度といえるでしょう。

 以下の図表は、平均的な受講生のデータを、年代別に整理したものです。

 年代別平均読字数の推移

 読書速度の向上率は、もともと読書に親しんでいたかどうかということや、始めたときの年齢、受講の頻度、および読む本の種類などの要因によって、個人差があります。

 それでも、BTRメソッドで粘り強くトレーニングを続けていけば、着実に読書速度は向上していくことが、上のデータからお分かりいただけると思います。

読書習慣の変化

 速読をマスターするためにBTRメソッドを受講される以上、客観的な数値の向上は、不可欠だと思います。そのためにも読字数の具体的な変化の提示は必要です。

 もっとも、BTRメソッドの予定プログラムを修了した方の声を聞くと、客観的に読むスピードが速くなったこと以上に、読書習慣が大きく変化したことに対して喜びを感じている方が多いようです。特に、これまで日常的に読書をしていなかった方に、このような傾向が見られます。年に1、2冊しか読まなかった(読めなかった)のが、自然と月に3、4冊、1年間では50冊くらい、あるいはそれ以上の冊数を無理なく読む習慣がつくのですから、読書に苦痛を感じていた方にとっては、画期的な変化といえるでしょう。

 活字に対する抵抗感がなくなった結果、読む本の分量に比例して、活字世界に対する好奇心や知識・教養が、自分の中で増幅していくことを体感する受講生も少なくありません。

 このことは、読むのが遅い→読むのがおっくう→読書から遠ざかる→情報処理能力が減退→ますます読むのがつらくなる、といった「遅読の悪循環」を、BTRメソッドによって、克服することができた証拠といってよいのではないでしょうか。

 事実、親に薦められて仕方なく入会した高校生が、プログラムの中盤から小説をむさぼるように読みはじめたり、読書や勉強から遠ざかっていたビジネスマンが、ためらうことなくさまざまなジャンルの本にチャレンジするようになる光景は、私たちの教室では、頻繁に見られます。

 このような、受講生一人ひとりの個性的な読書習慣の変化は、BTRメソッドを実践している私たちにとっても、大きな喜びとなっています。

速読に対する意識の変化

 私たちは、入会を希望する方に対しては、「BTRメソッドが目指す速読は、特別な能力ではない」ということを申し上げています。

 多くの方は、この言葉を、トレーニングの回数を重ねるにつれて、身体で理解していきます。このことを、ある受講生は、「BTRメソッドの速読は、好きなジャンルの本を夢中で読んでいるときの感覚に近い」と表現されました。

 速読のトレーニングをしたことがなくても、私たちは好きなジャンルの本を読むとき、いくらか速く読むことができます。たとえば、日本史に興味がある人が歴史小説を読む場合、あるいは、パソコンに関心がある人がパソコンの本を読む場合などです。

 好きな本を読んでいると、確かに、言葉の一語一句を読まなくても、主人公のセリフや、キーワードが目に飛び込んできます。活字を目で追いつつも、すぐに情景や登場人物の心理描写、あるいは、著者の考えをイメージとして、おおよそ頭に思い浮かべることができます。さらに、好きな本に熱中している場合、周りの雑音や、時間の経過が気になりません。

 このこと自体は、ごく当たり前のことといえるでしょう。これは、「速く読む」ことに必要とされる広い文字の識別能力および集中力・イメージ力が、人間にもともと備わっていることの現れなのです。

 ところが、日常的に読書に慣れ親しんでいなかったり勉強から遠ざかってしまうと、これらの情報処理能力は、読書全般に活かされないまま眠ってしまいます。

 BTRメソッドのトレーニングには、活字に対する抵抗感を減らすことで、これらの潜在的な情報処理能力を、読書全般で最大限に引き出す機能があります。「BTRメソッドの速読は好きなジャンルの本を夢中で読んでいる感覚に近い」という感想は、このトレーニングによって読書が全体的にスムーズになり、その感覚が、これまで好きな本を読んでいた場合のように、無理がないものであることを言い表していると思います。

 言い換えると、BTRメソッドによって得られる速読技術は、単に速く読むだけではなく、たくさん読むこと、楽しんで読むこと、および、さまざまなジャンルの本にチャレンジすることを、ごく自然な行為に変えていく効果があるといえます。

試験勉強・仕事面での成果

 BTRメソッドによるトレーニングは、読書のみならず、試験勉強や仕事の面でも大きな成果を上げています。

 1.イメージ記憶

 高校・大学の入学受験や各種資格試験の受験勉強、および仕事における大量の事務処理で不可欠な要素は、やはり記憶力です。そして、記憶力向上の鍵となるのは、情報を具体的なイメージに変換する過程をいかに効率的にできるかです。

 BTRメソッドでは、この点に着目して、記憶力の向上を図るためのトレーニングが組み込まれています。これは、言葉から得られる情報をすばやくイメージに変換して脳に記録するというプロセスに一定の負荷をかけることで、すこしずつ記憶力をアップさせるプログラムです(「イメージ記憶」)。

 このトレーニングを続けることによって、膨大な受験知識を記憶することに必要な、頭の「基礎体力」を、着実に向上させることが可能となります。

 2.倍速読書

 また、限られた時間の中で仕事や受験勉強の効果を上げるには、時間のメリハリが必要です。参考書を読む場合でも、時間をかければよいというわけではありません。

 この点、BTRメソッドにおける「倍速読書」は、向上した文字識別能力と読書内容への集中力を基礎として、速度優先の読み方と理解度優先の読み方をギアチェンジできる技術を身につけていきます。

 これによって、ポイントを素早くつかまなければならない箇所と、熟読して100%理解することが要求される箇所とを意識的に区別して、時間はかけたが頭に何も残らなかった、という事態を極力減らすことができます。

 3.読書内容への集中をはかるトレーニング

 さらに、本番の試験で実力を出すには、その時間内で集中力を最大限に発揮することが要求されます。事前準備がいくら完璧でも、本番でミスしたがために、涙を飲むケースは珍しくありません。

 ここで、生きてくるのが、BTRメソッドにおける「読書内容への集中」を図るトレーニングです(「スピードチェック」、「スピードボード」、「ロジカルテスト」など)。

 これらのトレーニングを継続することで、短時間のうちに、集中力を最高潮の状態に引き上げられるようになり、結果的に、試験本番中の集中力を持続できるようになるのです。

 BTRメソッドは、人間の情報処理能力を改善して、知的作業全般の効率化を図ることを可能とする実践的プログラムです。

 多くの方が、BTRメソッドのトレーニングを粘り強く続けた結果、みごとに具体的な目標を達成されています。特に、司法試験をはじめとする難関資格試験の合格者が、受講生の中から次々誕生していることは、BTRメソッドの大きな実績であり、BTRメソッドを実践している私たちにとっても、大きな誇り、励みとなっています。

(2)BTRメソッドで「できないこと」と「できること」
BTRメソッドでできないこと

 このような、BTRメソッドで目標を達成された受講生の例を聞くと、読者の方の中には、BTRメソッドを受講すれば、「苦痛な受験勉強から逃れられるのではないか」、「難しい参考書や専門書も、一晩で読んで記憶できるのではないか」という期待を抱く方もいるかと思います。

 しかし、残念ながら、それは難しいと言わざるをえません。

 もちろん、「目を通さなければならない」新聞や雑誌、ホームページ、メールマガジンなどを格段の速さで読めるようになるのは、それほど難しいことではないでしょう。

 BTRメソッドによって、大学合格や資格取得などの成果を上げた方の多くは、トレーニングを受けつつも、それまでの地道な勉強を続けていました。BTRメソッドによって、勉強そのものから逃れられるわけではありません。

 受験勉強に必要な参考書の類を読んで理解するには、その学習分野の基本知識が前提として必要です。これが不十分な段階では、ゆっくり読んでも分からないはずです。 BTRメソッドを受講したからといって、ゆっくり読んでも分からない本をパラパラめくっただけで読めるようになることはありません。

 つまり、あくまで一定の読書量や勉強量を確保しなければ、BTRメソッドの効果は十分に発揮されません。BTRメソッドにできるのは、文章の内容によって速度にメリハリをつけ読解プロセスを効率化することであり、本来必要とされる努力を省力化することではありません。

 速読は、万能薬ではない。

 このことは、速読に対する誤解を解くためにも、あらかじめ理解しておく必要があります。

BTRメソッドに「できること」

 一方、人より努力しているはずなのに、なかなか結果が出せないという悩みを抱えている方に対しては、BTRメソッドのトレーニングは着実に効果をもたらすはずです。

 これは、有名大学に合格したり、司法試験をはじめとする難関資格試験に最終合格された受講生だけに当てはまる話ではありません。速読に興味をもってクリエイト速読スクールを訪れる学生、ビジネスマンやOL、あるいは主婦の方たちの多くは、本を読んだり、勉強することに非常に前向きです。そして、このトレーニングを粘り強く続けることと同時に、レッスン以外の時間での努力を怠らないでいることが、BTRメソッドで具体的な目標を達成される受講生の一般的な傾向です。

 ここで、冒頭で述べたサッカー選手の話を思い出してください。

 BTRメソッドのトレーニングは、あくまで90分間戦う基礎体力を養うためのランニングやウェイトトレーニング、ストレッチに相当します。

 他方、本来の読書や勉強は、ドリブルやシュート、パスワークといった専門技術を身につけるためのトレーニングに相当します。

 これらは、いわばクルマの両輪です。どちらかが欠けたり、不十分なままでは、サッカー選手として大成しないのは、当然といえるでしょう。

 ところが、これまでの日本の学校教育においては、知的作業の「基礎体力」を養うためのトレーニングが、ほとんど見過ごされていたのです。いわば、90分間のゲームに耐えられる体力もないのに、ドリブルやシュートを教えられ、ゲームで結果を出すことを求められたのと同じ状態といえます。その結果、能力がありながら長年苦杯をなめたり、夢そのものを断念してしまうケースも多々あったのではないでしょうか。

 BTRメソッドは、いままで欠けていた、知的作業の「基礎体力」を養うためのトレーニングを提供することで、この点で力不足だった方の本来の努力が、正当に評価されるようにするためのプログラムです。このトレーニングと並行して、本来の勉強や読書を続けていくことで、その人が本来の実力を発揮することが可能になるのです。

 努力を怠らない人が、努力した分だけ必ず報われるような、知的作業面でのサポート・プログラムが必要だ――。私たちは、そうした思いをこめて、このBTRメソッドを実践しています。クリエイト速読スクールは、そうした自ら求めて努力する方々に支えられてきた、といえます。

 本書でご紹介する各トレーニングも、読者のあなたが、日々の積み重ねを前提として、取り入れていただくことを想定しています。その意味では、日常的な読書や勉強を怠った状態で、これらのトレーニングを繰り返しても、残念ながら思うような効果は出ない可能性があります。

 反対に、あなたが、このBTRメソッドと本来の読書や勉強がクルマの両輪関係にあることを理解された上で、本書を活用されるのであれば、必ず効果が出ます。このことは、BTRメソッドを実際に取り入れて目標を実現した多くの受講生により、実証されています。

 読者のあなたが、この本を活用することで、日々の積み重ねにBTRメソッドを取り入れ、一日も早く自己目的を達成されることを、私たちは、心から願っています。

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