司法試験合格者インタビュー 2005

クリエイト速読スクールの生徒として、講師として

実施日 2005.2.11(祝)

 クリエイト速読スクールは、現在12年(1993年~2004年)連続して司法試験最終合格者を輩出しています。2004年11月には、司法試験受験生であり、かつクリエイト速読スクールの講師でもあった仙石隆(せんごくたかし)さんが、見事最終合格を果たしました。
 そこで、司法試験とは一体どのようなものなのかを、この試験にそれほど知識のない方にもわかるように語っていただきました。司法試験受験生や合格者には当り前のことかもしれませんが、とても興味深い話になっています。
 どうぞご一読ください。

クリエイト速読スクール 代表 松田 真澄

司法試験とは何か?

松田

 仙石さん、司法試験最終合格おめでとうございます。いきなりですが、司法試験とはどのようなものですか? 資格試験の最難関とは聞いていますが、受けている人、受けようとしている人以外は、実際のところはほとんど知らないと思います。ぜひその辺から教えてください。

仙石隆講師

 はい。司法試験というのは、裁判官、検察官、弁護士になろうとする者に、必要な学識及びその応用能力があるかどうかを判定するものです。これには、司法試験法第1条という規定がありまして、その専門家になろうとするわけですから、最低限の知識とそれをどれだけ使いこなせるかを、ある程度見極めようとする試験です。まず択一(短答式)試験があり、その合格者が論文試験に挑戦し、そこでさらにフルイにかけられ、最後に口述(面接)試験にパスして最終合格となります。

松田

 なるほど。では、司法試験とは、毎年どれくらいの人たちが受けているんですか?

仙石隆講師

 昨年(平成16年、2004年)の例ですと、出願者が約50,000人で、実際に受けた人数がだいたい43,000人です。

松田

 その43,000人が、受験生の第一関門である択一試験を受けたということですね。で、択一試験に受かる人はどのくらいなんですか?

仙石隆講師

 正式には「司法試験第二次試験短答式試験」と言うのですが、受験生は一般的に「択一」と呼んでいます。その択一試験の合格者は昨年の場合、約7,500人です。だいたい6人に1人ですね。大学の教養課程を履修すると第一次が免除され、第二次の択一試験から受けられますので、通常、大学3年から挑戦します。

松田

 なるほど。優秀な若者たちが鎬(しのぎ)を削っているわけですから並大抵ではないんですね。それでは、択一試験というのは、どのような試験なんですか?

択一(短答式)試験について

仙石隆講師

 法律の基礎知識・応用力を試すというのは先程申し上げましたが、要は選択肢が5つありまして、その中から1つ正解を選ぶというものです。5月の第2日曜日に試験があり、憲法、民法、刑法の3科目各20題ずつで、全部で60題を3時間半で解きます。

松田

 どのくらい正解すればいいんですか?年度によって多少違うんですよね?

仙石隆講師

 7割(42問正解)から8割(48問正解)ですね。平成16年度は7割5分、45点でした。不合格となった44点に1000~1500人ぐらいいる世界です。

松田

 厳しいというか残酷な試験と言ってもよいですね。この1点差でまた1年黙々と択一の勉強、そしてその先にある論文の勉強をゼロからスタートするわけですから。この択一試験は仙石さんは苦労しなかったんですか?

仙石隆講師

  最近は、ずーっと受かってはいたんですけれど、ギリギリの年というのがけっこうありました。クリエイトに入った次の年(平成12年、2000年)もやはり苦労しましたが、その次の年(平成13年、2001年)からは3~5点余裕をもって合格できるようになりました。この数年は、まあ試験のときは大変なんですが、終わったあとは比較的余裕があったという感じがします。

松田

 なるほど。……仙石さん、択一試験何回受けたんですか?すみませんが個人的な質問させてください。

挑戦15年

仙石隆講師

 15回受けています。15回受けて、10回受かっています。

松田

 ということは択一には、5回落ちているわけですね。ラストに失敗したのはいつですか?

仙石隆講師

 平成10年(1998年)です。司法試験は平成2年(1990年)から受けています。最初に択一にパスしたのは、4回目の平成5年(1993年)です。平成8年と、そして10年にも落ちています。

松田

 平成10年(1998年)をラストに、平成11年から6年連続して受かっていたわけですね。クリエイトに来た理由は何ですか? 司法試験受験生でクリエイトに入る目的は、ほとんど択一対策です。

仙石隆講師

 クリエイトには択一のためというよりも、論文の成績がひどかったので、なんとかならないかと文章演習講座(文演)を受けるために入りました。つまり、論文対策です。速読というのは、実はその時点ではあまり考えていなかったですね。

松田

 平成11年(1999年)の10月5日に体験レッスンを受けていますね。仙石さんの『訓練の記録』を見ますと、体験レッスンのときの読書速度は約500字です。いまとなれば笑い話ですが、司法試験受験生としては遅かったですねー。速読というよりも、熟読癖を矯正しておかないと、実社会に出てからも辛いものがあったでしょうね。この数字では。

仙石隆講師

 その数字には理由があるのですが、言い訳になりますから、後で言います。

論文試験について

松田

 択一で、6人中5人がフルイにかけられるということですね。43,000人中7,500人しか合格できない。発表はたしか5月の終わりか6月のはじめでしたよね。すると次は論文になります。論文の試験日はいつですか?

仙石隆講師

 7月20日前後、2日間です。昨年は、7月18日と7月19日でした。

松田

 科目は?

仙石隆講師

 初日は憲法・民法・商法の3科目、2日目は刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法の3科目、計6科目です。1科目が2時間です。1科目につき1通1時間のペースで2通の論文を書きます。1通の文字数が約1,000~1,500字です。1通につき15~20分考えて、45~40分書いています。

松田

 択一が終わってから約70日後、択一の合格発表があってから約50日後に論文試験ですね。試験範囲が増えていますね。範囲が増えるだけでなく、司法試験の中で最も大変な試験と言われていますよね。ハタから見ていると「論文」こそ司法試験という感じもします。事実、仙石さんも論文で9回失敗しているわけですから。一体、論文試験ではどのようなことが問われているんですか?

仙石隆講師

 個人的なことしか話せませんが、僕の場合は、10回のうちの6回は暗記に頼っていました。細かいところまで覚えて抜け出そうとしていました。でも、これだけだと予備校の模試はある程度いい点数が取れるんですが、本試験に対応しきれません。択一も同じですが、本試験には必ずヒネリがあります。論文では、このヒネリに対応して、そこそこの答案を計12時間で12通書かなくてはいけないわけです。いいものもあるが悪いものもあるというのでは、ダメなんです。

松田

 合格したいま、論文試験で一番重要なこと、難しいことは何だと思いますか?

「問い」に答えることの難しさ

仙石隆講師

 「問い」自体に答えられないとダメということでしょうか。当たり前のことなんですが、これが一番重要で一番難しいことだと思います。答案を書いていくと、記憶に頼る勉強だけでは「問い」に対して、微妙なズレが発生することがあるんです。採点者はプロですから、そこは見逃さない。必ず悪い点数となって返ってきます。

松田

 なるほど。10回中6回、平成12年までは「問い」を正確に解釈して、その範囲で文章を作り上げることの意識が、徹底していなかったということですか?それで、残りの4回は?

仙石隆講師

 ここ最近は、現場勝負ということを念頭におき、試験会場という現場で1回2時間よく考えるということを徹底させようとしていました。変な話、人より抜けようと思わなくなりました。皆と同じ答案を書くことを目指そうと意識するようになりました。それまでは、人と違うことを書いてという気持ちが強かったですね。この数年は、一言一言にずっと慎重になりました。また、がまんしてがまんして書く力がついてきたと思います。「がまん」がきかなくなって、エイッと書いたところから必ずおかしくなっていくんですよ。

松田

 おもしろい話ですね。現場でよく考えることができるかということ、人より目立つ必要などないということ。そして、全体への配慮ということ。

仙石隆講師

 3年以内で合格する若い人たちは、この点が非常に優れていると思います。設問で要求されているものを、的確に書く力があります。彼らの答案は、別にたいしたことを書いていないんです。知識は、10年以上勉強している人たちよりは、当然圧倒的に少ない。それでも合格点を取ってしまうのは、覚えた知識を披露するなどという甘さがカケラもないからです。設問の範囲を正確に理解し、その現場で1,200字前後で回答できる能力だけを見てもらおうとしています。

現場でどれだけ考えぬく力があるか

松田

 知識だけでは通用しないということですか?

仙石隆講師

 そうだと思います。どこからか借りてきたような知識ではダメだということだと思います。試験会場という「現場」で、どれだけ十分に考えて書かれているかがよく見られているんだと思います。この4年くらい、こういうことばかりを念頭においてふだんの勉強をしていました。基礎を柱にして、現場での応用が効くようになろう、そして、当日の2時間×6回に全エネルギーを集中できるようにしようと、机に向かっていました。

松田

 本番の日に、最高の状態にもっていけばいいんですね。

仙石隆講師

 そうです。2週間前ならまだ合格ラインを越えていないが、当日になれば越えられるという自信がついてきました。

松田

 法廷の内外という「現場」に移ったとき、イレギュラーに対応する能力があるかが問われていると言うことなんでしょうね。口先で簡単に言って申し訳ありませんが。勉強法は?

仙石隆講師

 専門的な世界だから、話をすればだいたいどのくらいの知識量があるか見当がつきます。知識のない人はまず、勉強しなければなりません。合格するかどうかは、もっと先の話だと思います。択一を3~4回受かれば、知識的にはもう十分なんです。でも、論文に受からないものだから、なにか欠点があるのではないかと思い込み、もっと覚えようもっと覚えようとしていました。要は、暗記ですよね。すると本番の応用問題に対応できない、という悪循環を繰り返していた時期があります。これではダメだと気づいてから、4年目で受かりましたね。

松田

 それで?

仙石隆講師

 同じ本を読むときも、ある趣旨、原則で書かれているとするとどこまでが原則か?例外は何なのか?どういうふうに修正しているのか?原則との絡みや許容性、学者の考え方のその辺を読み取ろうとしていました。

松田

 論文合格者は、7,500人中約1,500人。5人に1人しか選ばれない。仙石さんは、今回この難関を突破したわけですね。そしてラストが口述試験、面接になるんですね。

口述試験について

仙石隆講師

 10月末に、憲法と民事系と刑事系の3科目の面接試験があります。試験内容は、完全に法律知識。試験官2人に受験生1人。2対1です。一流の学者や実務家に質問されて答えていくわけです。これまで体験したことがないような恐怖感、緊張感がありました。

松田

 試験は何日間ですか?

仙石隆講師

 5日間のうち3日。5日間が午前と午後に分かれて10パターンできるわけですが、そのうちの3つに出席するように決められているわけです。

松田

 恐怖感とは?

仙石隆講師

 択一も論文も、試験にでるところはある程度決まっています。しかし、口述は全範囲です。何が質問されるかわかりません。そして、論文合格発表から口述まで約2週間しかありません。この2週間で全範囲を見る、条文もよく読んでおかねばならないので、ものすごくキツイです。前日などは、ひっくり返るのではないかと思うくらい緊張しました。多くの人がそう言いますが本当でした。論文試験が難しいものだから口述試験に気が向かないこともありますし、ある意味9割の人は受かるものでもあります。また、口述の過去問のようなものも漠然としていて、情報が圧倒的に少ないということも恐怖感を募らせますね。試験室に入ればあっという間、先生の問いに必死に答えるだけですけどね。

松田

 内容をもう少し。

仙石隆講師

 最初のうちは質問についていくのに必死なのですが、そのうち各質問が有機的につながっているのがわかってきます。「あ、今までの質問はすべてつながっている……そういうことだったのか!」と思った瞬間、絶妙なタイミングで「これで終わります」と言われることが多かったです。このときはある種感動を覚えましたね。

松田

 うーん、プロですねー。……落ちる人もいるんですね?

仙石隆講師

 1割弱います。その人たちは、次の年も口述を受けることができますから、平成16年の口述受験者は約1,600人です。そして、最終合格者は1,483人でした。口述の不合格者は論文を受かっていて法律知識はあるわけですから、当日は緊張して舞い上がってしまったということになります。

松田

 司法試験について、わかりやすく話していただきありがとうございました。仙石さんは平成11年(1999年)の10月にクリエイトに入会されているわけですが、択一のためではなく論文のためということですね?

入会の動機

仙石隆講師

 5回目の論文試験に落ちて、絶望的な気分にその頃なっていました。法務省から成績がA~Gの評価で戻ってくるんですが、ひどい評価をもらっていました。先程も言いましたが、論文対策に何かをしなければということでクリエイトを見つけ、体験に来たわけです。

松田

 印象はどうでした?

仙石隆講師

 教室移転の前ですから、本当にこんなところに、司法試験の最終合格者が何人も通っていたのかと心配になりました。ドアを叩くときはちょっと気合が入りましたね。生徒になってみると若い女性の生徒たちがずいぶんいて、みんな度胸があるもんだと思った記憶があります。それから比べると、今はもう別世界です。きれいな教室ですよね。安心感が増したのか、親子、夫婦、恋人同士、友達同士と連れ立って通う人たちが多くなっていますよね。

松田

 そうですね。私としては以前の教室も気に入っていたんですけどね。ただスペースが足りなくなってしまって引越しをしたわけなんですが。

仙石隆講師

 体験レッスンを受けて、宗教的でないこと、政治的でないことがわかり安心しました。時間の無駄になることだけは避けたかったですから。

松田

 受講しだして、どのくらいで変化が見られましたか?

仙石隆講師

 通いだして15回くらいしたとき、新聞や雑誌を読んでいるときの感覚が違っていたことに気づきました。訓練量がある程度貯まって、あふれてきた瞬間です。それからは、どんどん本を読みはじめました。試験勉強で頭が疲れてくると読書をしていました。本を読むことは、高校まで大好きで法学部にするか文学部にするかで悩んだくらいです。ただ、司法試験の勉強を始めたころから実用書系しか読まなくなっていました。それがクリエイトに来てから、また乱読が始まりました。思えば、このときの試験に関係のない読書が役に立っている感じもします。最初のころはエンターテイメントから純文学まで幅広く読んでいましたが、しだいに、トルストイやポール・ヴァレリーなど海外の小説や評論が多くなっていきました。そのときの読書によって、ものの見方や考え方の幅が広がっていきました。これは非常に大きかったと思います。

松田

 最終合格寸前まで法律知識を身につけていき、そこからいろんな本を読んでいく、社会を見ていくというのは、また違う感覚があるような気がしますね。クリエイトと出会ったのも、いいタイミングだったんじゃないですか?

教室への驚き

仙石隆講師

 小学校4年生くらいから60代の年輩の方までが同じ教室で一緒に授業を受けるなんて、普通ありえないじゃないですか。そして、予習もいらない、手ぶらできてよいでしょう(笑)、すごく新鮮でしたね。ワイワイガヤガヤやってるわけではないんですが、雰囲気がすごく楽しかったですね。

松田

 宣伝していただきありがとうございます。辛かったところは?

仙石隆講師

 講師が他の生徒に話しかけるじゃないですか?自分のときはもちろんいいのですが、他の人へのアドバイスが耳につき、体験レッスンから3~4回目くらいのときまで、集中できないと思いましたね。「なんで話すんだよー!」と。自習室のようなシーンとした静かなところでしか勉強したことありませんでしたから。ところが、たぶん5回目くらいからだと思いますが、まったく気にならなくなりました。すぐに自分の世界に没頭できるようになりました。いまのは、体験レッスンのときの読字数の低さの言い訳でした(笑)。

松田

 各訓練で時間を計っているときは話しかけませんが、数字を計算しているときとか、答えのチェックをしているときとかは、時間の流れがゆるむときですからワンポイントアドバイスのようなものがありますよね。それが気になっていたというのは神経質すぎのような気がしますが。

仙石隆講師

 その通りです。とにかく、考え方が狭かったと思います。「こうじゃなきゃいけないんだ」みたいなものが自分の中にあって、それ以外は受けつけない状態になっていました。

松田

 速読訓練が受験勉強に対して、具体的にどのような影響を与えていきましたか?

速読訓練について

仙石隆講師

 結論から言いますと、クリアになったということですね。択一試験の文章というのは知識問題なんですが、それとともに、論理テストのような設問になっています。今日は去年の択一の問題(「平成16度年司法試験第二次試験短答式試験問題集」)そのものを持ってきてみたんですが、とにかくその場で素早く考えて答えを出せる人間がほしいわけですから、ヒッカケが多い問いになっているわけです。その文章がスーッと頭に入ってこなかった。それまで、受かっているときでも最後まで全て解くことができませんでした。それが1回読んで理解できるようになりました。二度読み三度読みしなくなりました。もともと読むのが遅くて、それで二度読みするんですから時間が足りなくなってしまうわけです。

松田

 他にはどんなことに役立ちましたか?

仙石隆講師

 人より読むのが遅いというコンプレックスがありましたから、これがなくなったら、頭の重しがとれたような感じでスピードがついていきましたね。意識の問題も相当大きいと思います。遅いとか、どう読んだらいいのかとか余計なことばかり考えていました。訓練によって、思考が直線的になっていったんでしょうね。あれもこれもという曲線的思考も否定しませんし、むしろ好きなんですが、ある方向に向かっていくときの矢印が太くなった気がします。だからこそ瑣末なことにも目がいくようになりました。

文演について

松田

 文演はどうですか?

仙石隆講師

 もともとこのためにクリエイトに来たわけですから、影響は大きかったですね。「文章演習講座」は2回で元を取ったという感覚がありました。というのは、いまもそのテキストを使っているかどうかは知りませんが、そのテキストについての解説を松田さんがくれて、帰りの電車で読んだとき雲が晴れていったんです。テキスト自体も家の本棚に学生時代に買ってちゃんとありました。でも、深く読めていないから、そこにあるだけなんです。僕はそれまで文章は難解だろうが、それはその人間の個性だからよいものと思っていました。難しかろうがわかればいいだろうと。しかし、テキストを熟読し、松田さんのくれた解説を読んで「短く、相手にわかりやすくしないとダメ」ということが芯からわかった気がしました。大きかったですね。あとの8回はおまけのようなものでしたから、とても得した気分でした。最終回の要約で、まだうまく取れていないというのもショックでしたが、最初の頃の衝撃の方が大きかったですね。

松田

 テキスト名については言ってもかまわないのですが、文演のお楽しみということにしましょう。クリエイトに入った限りは文演を受けてほしいですね。なんでこんな大事なことを中学・高校時代に教わらないんだと、ほとんどの大人は思うようです。これまでの受講生には大学で法律を教えている先生もいましたし、高校の国語や英語の先生もいました。去年の36期生には滋賀の大津市からバスで通っていた生徒さんもいました。33歳で銀行を辞めて司法試験にチャレンジして3年目。択一を合格できるようになり、論文のためということでした。さまざまな職業の人たちが、実に熱心に通ってきています。

仙石隆講師

 文演には、それだけの魅力があると思います。自分の文章に自信を持っている人ほど受けてほしいと思います。中途半端であることが、いかに危険なことかが理解できるはずですから。僕の場合はこうすればよい、またはこうしなければならないという型がなくなったことが大きかったですね。その場その場で、与えられた問題に最大限誠実に答えることが重要と気づかされました。

講師となって

松田

 仙石さんには平成13年(2001年)からクリエイトの講師をお願いするようになったわけですが、約4年間講師をすることによって得たものはありますか?

仙石隆講師

 生徒のときもおもしろい体験をしていたわけですが、講師になってまたたくさんのことを学びました。当然のことですが、講師はたくさんの人を見ます。自分が習熟、成長していけばそれで完了というのが生徒なら、講師はうまくできない人とつきあうことが仕事になります。「自分ではできる」ことが生徒さんができないとき、どう伝えれば理解してもらえるのか、伝えることの難しさと闘っていた気がします。90分間、頭がフル回転していました。

松田

 非常によくできる生徒さんからも、学んだんではないですか?

仙石隆講師

 よくできる人は、姿勢というか構えが違いますね。さまざまな訓練の1分2分3分に集中していくときの凄みを、こちら側から見ることができたとき、講師をやらせてもらってよかったなと思いましたね。

松田

 よくできる人の姿を見ることができるのは、講師の特権かもしれませんね。

クリエイト速読スクールについて

松田

 去年(平成16年、2004年)は、1月から通信教育のユーキャンから『新・速読講座』がスタートし、12月には日本実業出版社から『速読らくらくエクササイズ』が出版されるという大きな節目の年となりました。講師から司法試験最終合格者も出ましたし(笑)。この4年、中から見ていてどうでしたか?

仙石隆講師

 大げさなことなんて言う必要ないんですよ。僕の個人的見解は、1万字/分も読める必要はないということです。ほとんどの本を3,000字/分で読めるなら、無敵だと思います。クリエイトが司法試験合格者を出そうとしたのは、内輪でしか通用しないような10倍速読、10万字/分速読への究極の対抗策であると思います。そして、時間が経つほどに社会に受け入れられていくはずです。

松田

 よくご理解いただいてうれしいかぎりです(笑)。

仙石隆講師

 本好きな人、仕事で忙しい人ほどよく伸びますよね。クリエイトに通う生徒さんにはそういう人たちが多いと思いますが、そういうひとはまだまだ山ほどいるはずです。努力することをいとわない彼らが注目するように、そして彼らに受け入れてもらえるようなシステムを作っておけばよいと思います。

松田

 ユーキャンで通信教育がスタートして、この国にこんなに一所懸命な人たちがいるんだと思いましたね。クリエイトの訓練はよく言えば緻密、ふだんの言葉で言えばこまかいじゃないですか。それを導入教材やビデオがあるとはいえ理解して、一人で力をコツコツ積み上げていくというのは驚きですね。頭がさがります。

仙石隆講師

 僕には無理です。通わないとダメです。クリエイトの場合は、メソッドがしっかりしていますよね。だから、通信教育でがんばろうが教室に通おうが、真正面からトライすべきだと思います。得るものが確実にあるわけですから。

松田

 クリエイト速読スクールの場合は、本(『速読らくらくエクササイズ』)にしても通信教育(ユーキャン『新・速読講座』)にしても教室(池袋教室)にしても、他の速読本、他の通信教育的パソコン速読ソフト、他の速読教室とそれぞれ比較したときに、圧倒的に良質でリーズナブルな「商品」であれたらいいなと思っています。インタビューの最後に、ここまで読んでくださった方に一言メッセージをお願いします。

仙石隆講師

 「自分なりに必死になってやっている」というセリフがあります。その倍くらいのエネルギーをそそぎこむつもりでがんばってください、というエールはどうでしょうか。僕自身のことではなく、講師を体験した者として、本当に集中している人の姿を見ているから、言えるようになったものですが。一心不乱に、ひとつのことに集中すれば、いろんなことが展(ひら)けていくと思います。

松田

 これからもがんばってください。長い時間ありがとうございました。

※インタビューでは、新司法試験についても質問しました。しかし、制度的にまだ流動的な部分が多く割愛させていただきました。