司法試験合格者インタビュー 2006

試験勉強と速読の関係について

実施日 2006.2.11(祝)

 昨年11月、クリエイト速読スクールより4名の司法試験最終合格者が誕生しました。そのうちの2名が講師を担当していた佐々木浩介さんと永尾竹則さんでした。
 司法試験受験生でかつ講師でもあった両氏に、試験勉強や速読一般についてインタビューしました。これから資格試験や速読訓練にチャレンジする方にとって、参考になるコメントがあるかと思います。ぜひ、ご一読ください。

クリエイト速読スクール 代表 松田 真澄

=目次=

短答式試験について

松田

 佐々木さん、永尾さん、司法試験最終合格おめでとうございます。ご家族やお友達とともにクリエイト速読スクールにとっても、待ちに待った朗報でありました。本日は、これまでのご苦労を振り返りつつ、いま、新旧の司法試験ばかりでなく資格試験に挑戦している方や、速読に関心を持っている方を念頭に、お話を聞かせてください。まずは、クリエイト速読スクールに入った年数の早い佐々木さんから簡単に自己紹介をお願いします。

佐々木講師

 はい。クリエイト速読スクールには1995年(平成7年)から通い、'97年から講師の一員となりました。司法試験には11回挑戦したことになります。

松田

 '95年は、クリエイト速読スクールがSEG(エスイージー)という塾で高校生たちに速読を教えに通いだした思い出深い年です。では、永尾さんお願いします。

永尾講師

 私の場合は、平成に入ってからずっと司法試験の勉強をしていたことになります。クリエイト速読スクールには2000年(平成12年)9月に入会しました。'02年からスタッフの一員となりました。そこからの短答式試験は、合格、不合格、合格、そして最終合格ですから、クリエイト速読スクールにお世話になってから流れがよい方向に動き始めました。

松田

 旧司法試験では、短答式試験も、論文式試験と変わらないほど過酷なんですよね?

佐々木講師

 今回、最終合格して何が嬉しいかといえば、二度と短答式試験を受けなくてよいということです(笑)。短答式試験に失敗すると、その年の論文式試験を受験できません。3時間30分ですべてが決まってしまうという点で、非常に過酷な試験といえます。クリエイト速読スクールに通う前の私は、大学入学試験の延長ぐらいに、短答式試験を甘く見ていました。

松田

 どんなに論文試験に実力がある人でも、わずかのケアレスミスで落ちてしまう、厳しい試験ですよね。具体的に、どういう点で短答を甘く見ていたんですか?

佐々木講師

 クリエイト速読スクールに通う前は、出題者が要求している思考プロセスを読み取る、という姿勢が欠けていました。一つ一つの肢(あし)が、何の知識を要求しているか分からないまま解答していたのです。どんなに勉強量を増やしても、それでは合格点に届きません。3時間30分で、自分の実力を最大限に出し切るという意識も希薄だったと思います。

松田

 たしかに、資格試験は、ガムシャラに頑張れば何とかなるというわけにはいかないようですね。教室で多くの受講生を見ていますが、司法試験は特にその傾向が強いように思います。

永尾講師

 私の場合は試験問題の量に圧倒されてしまっていました。限られた時間内で、長大な問題文を正確に読み取って答えを導き出す作業には焦りが生じてきます。焦ると読み方が雑になるため、また焦るというような悪循環に陥ってしまいます。効率的に読んで考えるというプロセスができていなかったため、後から見直すと「何でこう考えてしまったんだろう」というケースも多々ありました。

論文式試験について

松田

 論文式試験は、どうだったんでしょうか?「こんなことに苦労した」というよりも「こういうことに注意すべきですよ」という切り出し方で話してもらえませんか?

佐々木講師

 インプットの段階では、基本的な条文を確実に記憶して、なぜその条文ができたのかという趣旨、要件、効果を正確に押さえる必要があります。立法者の視点から、具体的な事例に置き換えて考えるのがコツです。たとえば、表現の自由(憲法21条1項)でいえば、立法者は、新聞や報道機関の正当な政治的言論を想定していたはずです。他人のプライバシーを暴き出すゴシップ記事や、スピーカーでがなり立てる街宣活動を想定していたとは思えません。イメージを具体的にしてインプットしていくと、実際に論文の答案を書く姿勢も変わってきます。問題の事例をイメージに置き換えて、それが、立法者の想定や判例の射程範囲とどうずれているのかを具体的に考えていく。単に予備校の答案例を丸暗記してそれを吐き出すという勉強方法から脱却して、インプット、アウトプットいずれにおいても、具体例で突き詰めて考えてみるというのがポイントです。勉強しているのに結果がでないという方は、こういう点を軽視していないか、注意してみることをお勧めします。

松田

 永尾さんは、論文式試験では、どのような点を重視されましたか?

永尾講師

 問題で問われていることに対してできる限り過不足なく、条文解釈を通して説得力を持って書いているかどうかがポイントになると思います。設問自体への理解が浅いと答案内容も浅くなり、最悪の場合、問いからずれていってしまいます。また、問題文そのものの言い回しによって、答案全体の構成が違ってきます。どう書くかより前に、まず、問題が何をどう聞いているのか、的確に分析できるかが重要だと思います。

行政書士試験

松田

 ところで、佐々木さんも永尾さんも、行政書士試験を1回で合格していますよね?

佐々木講師

 はい。試験に落ちた年に、気分転換に受験して合格しました。目標が達成できなかったときでも、絶対に勉強から離れてはいけないと思います。自分の勉強環境を一度崩すと、本来実力がある人でも、それを回復するのが非常に難しくなります。私は、司法試験に落ちたときには、活字の世界から離れないように、気分転換のときにさえ本を読んだり、司法試験とは関係のない他の勉強をしたりしていました。特に、よい本を読むことは、自分の考え方、思考方法を修正するためのチャンスです。

松田

 行政書士試験って簡単なんですか?人気のようですけど。

佐々木講師

 決して簡単ではありません。試験の範囲が非常に広いですから。60問の設問中20問(2006年より14問)が一般教養、あと40問(同46問)で憲法、民法から住民基本台帳法や税法まで広範に問われます。それを2時間30分で回答していきます。毎年8万人前後受験して約2500人~4000人の合格者ですから、合格率は3%~5%ぐらいです。ただ年度によって合格率の変動があり、私の場合たまたま運がよかったともいえます。

松田

 なるほど。永尾さんも、気分転換の受験ですか?

永尾講師

 はい。勉強の気分転換にという意識はありました。あと、何か資格を取って自信をつけ、試験に対する負け癖から抜け出したい気持ちも多少ありました。ちょうどクリエイト速読スクールに通いはじめた頃です。試験科目には一般教養もあって、苦手の日本史や政経などは電車の中で勉強し、後は過去問を一通り解きました。家族に対しての安心材料にもなるかも、と思っていました(笑)。

持続することについて

松田

 資格試験の勉強を一生懸命されている方たちのために、目標達成の方法というか、意志の持続のさせ方について語っていただけませんか。今度は永尾さんから。

永尾講師

 試験に落ちると精神的にまいるわけです(笑)。妻がいて、子がいるわけですから、1年1年が勝負になります。本音としてはあと2~3年というところがあるんですが、でもそれを言うことはさすがにできません。焦ったまま、また試験を受けてしまうという悪循環にはまっていた時期があります。物事を悲観的にとらえて落ち込んでいくわけです。

松田

 よく這い上がりましたね(笑)。

永尾講師

 それが本の中の一言であったり、両親や妻の一言であったりしたというのが、今考えるとおもしろいですね。本を一冊だけ挙げさせていただくと、中村天風という人がいるんですが、その人の『運命を拓く(講談社文庫)』を読んでからは、物事を楽に考えられるようになってきましたね。この本というだけでなく、天風さんを知ったことによって物の考え方が大きく変わっていきました。どんなことをしていても、全ては試験に役立つと思えるようになりました。1点差で落ちたから悔しいというよりも、それがむしろ自信になりました。「もうあきらめた方がよい」から「もう受かるまであきらめない、やめない」という方への心境の変化もその頃です。また、合格点は向こうが決めることだからとサバサバできるようにもなっていきました。

松田

 悲観的な考えにならないためには、ある種の発想の転換が必要ということでしょうか。それでも、悲観的になってしまったときには、どのように考えていましたか?

永尾講師

 はい。以前の私は、一度悲観的な考えに陥ると、どうしてこうもできないのだろうと自分を抽象的に責めてばかりいました。でも、こんな状態では、いくらがんばろうとしても弱点を把握できていないため、結局、自分に自信が持てないんですよ。これではいつまで経っても先へ進めません。試行錯誤の末ようやく分かったことですが、こういうときに必要なのは、できるだけ細かく問題を解答する過程を再現してみて、次回への対策が自分の中で具体的に言えるようにしておくことだと思います。自分の弱点を客観的に認識していれば、徐々に成果が出て、少しずつ自信も持てるようになります。そのわずかな自信が相乗効果となり、さらに上の結果を出すことも可能になるのです。遅ればせながらそのことに気づいてからは、マイナス思考から抜け出すことが、以前よりも容易になったと感じています。

松田

 奥さんの一言にも影響されたとのことですが、それはどんな一言だったんでしょう?

永尾講師

 妻の一言というのは「自信持っていいと思うんだけど、何で持てないんだろ?」というせりふです。長年つき合った身近な人間にポツンといわれたときは自己暗示のクスリになりましたね。

松田

 いい話ですね。佐々木さんは、どんな風にモチベーションを維持してきましたか?きっと、スランプのようなものもあったと思いますが、そういうときは、どんなことをしていましたか?

佐々木講師

 スランプで、ただひたすら1週間寝ていたこともあります。ひたすら寝て、食べて、また、寝るという生活です(笑)。苦し紛れに、「試験必勝法」という類の本を読み漁ったりすることもありましたが、そのままでは効果はでにくいですね。あの手のハウツー本は、あまり受験勉強で苦労されていない方が書いたものが多い。「午前中の短時間、集中して勉強する」とか、「メリハリをつけて効率よく暗記する」とかいうノウハウは、一般論としては分かります。でも、ある程度の受験勉強の基礎体力を前提としているため、その前提部分の弱点に気づいていない人間にとっては、実践すること自体が困難なのです。

松田

 その手の本は、倍速読書訓練用の教材として教室にもありますよね?

佐々木講師

 置かれていますよね(笑)。さきほどの永尾さんのお話とも共通するのですが、スランプに陥ったときに大切なことは、一般論に振り回されすぎず、自分の弱点をトコトン突き詰めて考えみることだと思います。すぐに、答えはでません。情報処理能力とインプットの精度を極限まで高めつつ、次の本試験の1時間前まで、自分の思考プロセスの弱点を反省するようにしてください。単に「勉強不足だった」、「もっと、勉強しよう」と考えるだけでは、スランプ脱出方法としては不十分ではないでしょうか。あと、いろんな人の話を聞いて、たくさんの本を読んで考える癖をつけていくと、自分の思考方法が磨かれるような気がします。小説でも、伝記でも、造船技術の専門書でも、般若心経の本でもなんでもいい。手当たり次第に本を読んでいくと、困難な壁にぶつかったときのヒントに、出会うことがあります。これは、なかなか普通の予備校では習得できません。この予備校では足りない部分を、私は、クリエイト速読スクールでフォローすることができたと思います。

松田

 佐々木さんは、以前から短期合格者の観念的なハウツーは、そのままでは使えないと言っていましたね。これまでの経験を踏まえて、自己満足に陥らずに勉強をしていく方法があれば、資格試験を受験されている方にアドヴァイスしてもらいたいのですが。

佐々木講師

 一例として聞き流していただければと思います。勉強期間が長引いてくると、知らず知らずのうちに、形あるものにこだわる傾向が出てくることがあります。ノートの取り方とか、解いた問題数とか、模試の点数だとか。自分の実力に自信が持てないため、形あるものに必要以上にこだわってしまうことがあるのです。こうなってくると、自己満足に陥っている可能性があります。一見、勉強量を増やしているように見えても、実力に直結しないため、なかなか成果が得られません。こうならないためには、2日後なり3日後に、「自分が勉強した法律論は、要は何なのか?それを、何も見ないで自分で表現できるか?自分が学んだことを、人にわかるように話せるか?書けるか?」というように、シビアに自分に問いかけることが必要だと思います。

速読がどのように有効なのか?

松田

 一つのことに打ち込んでいた人たちの話はやはり実に面白いです。前年の仙石さんのインタビューをしていたときも感じました。それで、速読はどうだったんですか?本題といえば本題なんですが。永尾さんお願いします。

永尾講師

 試験の目標は合格点を取ることです。問題を全部解けても解けなくても合格点を取れればよいのです。ただ、このためには、じっくり一問一問きっちり解いていかないといけないかというとそうではなく、むしろ、一問一問きっちり解くと時間内に終わらないどころか合格点も取れないという危険性が高くなります。そこで、時間内に効率的に点数を稼いでいって、合格点を上回るような解き方をすればよいわけです。そのためにこそ速読訓練を繰り返して、少しずつでも、このような解き方ができるにようにしていくことが重要です。ですから、訓練のときには、素早く全体に目を通すということを強く意識して練習するとよいと思います。

松田

 勉強すれば知識は増え、正確になっていきますよね?

永尾講師

 もちろん、知識が増えて正確になれば読むスピードは多少速くはなりますが、それでも細部にこだわりすぎると時間切れになる危険性があります。そこで、問題の難易度を見極めて、効率よく問題文のポイントを押さえて読んでいく必要が出てくるわけです。相対評価の試験ですから、他の受験生よりできるようになりさえすれば問題ありません。この点は、BTRメソッドで、制限時間内に全体に目を通すという意識を強く持って練習していけば、それほど難しいことではないでしょう。何もしないで、試験時間内に終わらないから合格点を取れなかった、というのは言い訳にならないと思います。効率的に読んで時間内に終わらせるためには、どのようなトレーニングをすべきか突き詰めて考える必要があります。

松田

 永尾さんは、他の速読教室のトレーニングも試された上で、BTRメソッドが、それに適したトレーニングと考えたのでしょうか?

永尾講師

 そうです。他の速読トレーニングとは異なり、BTRメソッドの訓練を続けていれば、文章を一字一句逃さずに読まなければだめだという恐怖感が薄らいでいき、文章を抵抗感なく読めるようになると感じました。この精神的な余裕があるからこそ、問題文を効率的に読めるようになると思います。

松田

 問題文を効率的に読むということの意味を、もう少し具体的に話していただけますか。

永尾講師

 問題文には、それほど考えなくても確認するだけでよいところが、必ずあります。反対に、正解を導くための基点となりそうなところは、できるだけ丁寧に読まなければなりません。効率的に読むための一つ目のポイントは、この判断の見極めにあります。制限時間内にどれだけこなせたかどうかという結果論ではなく、訓練中にどれだけこのメリハリを意識できたかです。また、法律関係の試験では、細かい部分を丁寧に読んでいくと、かえって間違えてしまうということが少なからずあります。そうならないためには、二つ目として常に全体との関連性を考えながら文章を読んでいく必要があります。効率的に読むということの意味は、トレーニングの過程で、以上二つの点についてどれだけ意識できているかだと思います。

松田

 重要な部分とそうでない部分とでメリハリをつけることと、文章全体に目を向けるというのがキーポイントですね。佐々木さんはふだんの速読訓練でどんなことを意識していましたか?

佐々木講師

 永尾さんと同様、やはり私もスピードとリズムを優先して、いかに効率よく処理するかを意識していました。もちろん、それを意識しても、読字数が急激に増えるということはありません。何度も壁にぶつかります。そういうときは、単に「速く読もう」というよりは、「たくさん読もう」、「いろんな本を読もう」という考えでがんばっていました。一冊でも多く、少しでも多くのジャンルの本に目を通そうとすれば、おのずと読書にメリハリが出てきます。本の概略やポイントを把握する能力も向上してきます。そういったプロセスを経ることによって、ようやく1分あたりの読字数が上がり、勉強の効率化にも結びついたという感じでしょうか。非常に地道ではありますが、合格するためには必須の過程だったと思います。講師の立場から受講生のみなさんにアドヴァイスする際にも、目先の数字を上げるというより、半年とか1年とかある程度の期間は極端な多読が重要ということを伝えたいという気持ちでいました。

イメージ記憶訓練について

松田

 最後に一つ二つ、具体的にBTRメソッドのトレーニングについてコメントしてください。佐々木さんはイメージ記憶訓練がとてもよくできる人でした。勉強に役立ちましたか?さっき論文式試験のときに「立法者の視点から、具体的な事例に置き換えて考える……」というあたりと関係するような気がしますが?

佐々木講師

 イメージ記憶訓練には、記憶力アップもさることながら、難しい定義や条文の趣旨の理解が深まるという効果があると思います。一つの定義は、それ単独で何か意味があるわけではありません。他の並列的な概念との違いとか、法制度の全体構造の中での位置づけを理解する必要があります。上位概念・下位概念、並列的概念、類似の制度との「関係性」をいかに意識できるかがポイントです。イメージ記憶訓練を続けていくと、抽象的な定義相互の「関係性」に非常に敏感になるんですよ。おかげで、本番の試験では、まさに一つの知識から関連知識が芋づる式に出てくる感じでした。単なる記憶術ではないんです。商法、民事訴訟法、刑事訴訟法のように、広く浅く確実に押さえることが要求される科目で、特に効果があったと思います。

松田

 さすが佐々木さん、コメントがリアルですね。もう少しお願いします。

佐々木講師

 専門的な話になって恐縮ですが、たとえば、いわゆる「裁判」には、厳密には、判決、決定、命令の三種類があるんです。私は、このような並列的概念を見つけると、意識的に分単位で時間を区切って三つの定義を同時に記憶するようにしていました。別に無理しているわけではなく、その方が効率的だからです。今のはごく簡単な例ですが、イメージ記憶訓練の応用・実践として、二つの言葉の「関連性」を瞬時に考えるトレーニングを続けていると、一見、教科書でバラバラの箇所に書かれてある用語が、実は関係していることに気づきやすくなります。アウトプットの場面でも、「裁判」とくれば、判決だけを想定してはいけないなというように、問題文のひっかけにも、反応しやすくなりました。速く読むことにとらわれすぎると、こういうところを読み飛ばしてしまう危険があります。ところが、イメージ記憶訓練という過程を経ることで、言葉が持つ意味に瞬間的に反応する力が向上するわけです。速く読んでも重要な点の見極めが容易になります。いかに効率的に問題文を読むか、という先ほどの永尾さんの話にも通じるものがあると思います。

倍速読書訓練について

松田

 BTRメソッドが、読むことに対して総合的にアプローチしていることの現われといってもいいかもしれませんね。BTRメソッドは、序盤の視野拡大訓練、中盤ではイメージ記憶訓練などの読書内容に集中するための訓練、そして総仕上げとしての倍速読書訓練から構築されているわけですが、永尾さん、その倍速読書訓練を、どのように考えていましたか?

永尾講師

 従来の理解の仕方のままでスピードを上げようとしてもどうしても難しいですね。思い切って理解の仕方を変える勇気を持って見ていくわけです。慣れるまでは多少時間はかかりますが、それほど大変なことではありません。ある程度のスピードで文章を読もうとすると、自分なりのスピードに対応した内容の取り方が身についてきます。ある決まった理解の仕方があるわけではありません。その辺の考え方を習得していくことが倍速読書、ひいてはBTRメソッドのおもしろいところになります。試験では問題文が的確に読めなければ、どれほど知識があっても正解を導くことはできず、合格もできません。そのためには、問題文を落ち着いて読む必要があります。倍速読書の積み重ねはこういうことに非常に有効だと思います。

松田

 考案者の立場から一言付け加えますと、BTRメソッドの倍速読書訓練の斬新性は、ある目の動かし方、見方をすれば速く読めようになるという一面的な方法論を保留して、集中すれば現在の自分の倍くらいのスピードで読めるはずという体験的な発想に転換したところだと思います。そして、その発想を支えるために、やはり体験的なレベルからさまざまなトレーニングが誕生してきたという経緯があります。結果として、速く読むだけではない複合的なアプローチが可能なトレーニングプログラムになっています。永尾さんの考えも、この複合的なトレーニングから得られる効果が重要ということでしょうか?

永尾講師

 ええ、そうです。何も速く読むことだけがこの訓練の目的だとは思いません。速読は、目標達成のためのひとつの手段です。大切なことは、すべてのトレーニングへの集中と、スピードコントロール能力の獲得、そして、メンタルタフネスの確立だと思います。それらが身についてきたからこそ、自分の場合は、試験で結果をだせたのだと思います。

受験生へのメッセージ

松田

 最後に、佐々木さん、永尾さん、ここまでこのインタビューを読んでいただいた方に一言ずつお願いします。

佐々木講師

 資格試験で思うような結果をだせていない方は、ぜひ、インプットとアウトプット両面で、少しずつ「負荷をかける」という発想を取り入れてみてください。BTRメソッドの基本コンセプトの応用です。たとえば、記憶する分量を維持したまま時間を5分短縮する、解いていた問題数を同じ時間内で1問増やす、という具合です。これを続けていると、やがて限界がきます。そう簡単にはいきません。ところが、それでもめげずに何週間か続けていると、その限界を破る瞬間がやってきます。最初に思っていた限界が、実はそうではなかったことに気づきます。当初の限界を乗り越えるこの実体験こそが、最終的には、本試験での自信につながっていくのです。ホントの勝負はそこからです。試験に落ちたときに「勉強不足だった」とか「集中力が切れた」、「センスがない」などの観念的な反省しか思い浮かばなかったら、まだ、自分には余力があると思ったほうがいいでしょう。能力の限界を自分で決めないことが、最後の決め手になると思います。

永尾講師

 私の場合、クリエイト速読スクールにくるまでは、試験というか大事なことには負け癖のようなものがついていました。これを打破したいという思いがありました。もっと地に足の着いた自信のようなものを得たいと思っていました。クリエイト速読スクールにきてそのつかみ方が分かってきました。たかが、と誤解をおそれずに言いますが、たかが本を読むための速読ですが、されど速読でした。速読の訓練を通じて人生のあらゆる場面でのヒントを得られたと思います。より多くの方にBTRメソッドを知っていただいて生活やお仕事に活かしていただきたいです。私は、試験に苦しんだのですが、そのお蔭でクリエイト速読スクールと縁をいただいて、合格以上のことを得ました。将来に必ず活きてくると思います。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

松田

 佐々木さん、永尾さん、本日はありがとうございました。これからのご活躍を期待しています。
 本当にありがとうございました。